ヒップスラストとヒップエクステンションは何れの種目も臀部を中心に鍛える種目ですが、動作は大きく異なります。今回は、ヒップスラストとヒップエクステンションの違いについてご紹介します。
ヒップスラストは英語で「hip thrust 」で、「お尻の推力」、つまり、「お尻を推力として使う」種目です。この「推力として使う」という部分ですが、お尻を起点にして身体及びバーベルの上げ下げを行うということです。
ヒップリフトは英語で「hip extenshion」で「臀部の伸展」を意味し、お尻をストレッチさせながら実施する種目です。
以上は抽象的で分かり難いですが、ヒップスラストとヒップエクステンションはそもそもの身体の向きが異なります。ヒップスラストは仰向けで実施するのに対して、ヒップエクステンションは基本的にはうつ伏せに近い状態で実施します。
ヒップスラストとヒップエクステンションはいずれも臀部を鍛える種目ですが、臀部以外で鍛えることができる部位が微妙に異なります。これにより、効果も微妙に異なります。
ヒップスラストは、大臀筋、ハムストリングスに加えて、脊柱起立筋及び腹横筋を鍛えることが期待できます。このため、臀部の引き締め効果に加えて、姿勢改善効果及びお腹の引き締め効果を期待できます。
一方、ヒップエクステンションは、大臀筋、ハムストリングスに加えて、中臀筋を鍛えることを期待できます。このため、より効率的な臀部の引き締め効果を期待できます。
ヒップスラストとヒップエクステンションを比較した場合、自重で実施する限りではエクササイズ難易度はほぼ同一です。
ただ、ヒップスラストの場合には、基本的にはバーベルを用いて実施することがほとんどであり、その場合にはエクササイズ難易度は大きく増大します。ヒップエクステンションでもバーベルを使用して実施することもあり、そのように実施すると劇的に負荷を高めることができますが、そこまで実施する頻度は高くないことから、基本的にはヒップスラストの方がエクササイズ難易度が高いと言えるでしょう。
ヒップエクステンションは、「自重で実施する大臀筋を鍛える種目」という見方ができるため、一緒にやるのは効果的です。
ヒップスラストは、あまり重量を扱うことが推奨される種目ではありませんが、結果として重量を扱ってしまうことが多いです。この際、ヒップスラストで扱うような重量をいきなり扱うと、パフォーマンスの低下や怪我の恐れがあり、あまりおすすめできません。
この場合、ヒップエクステンションをウォーミングアップ種目として実施することで、以上のような問題を防ぐことができます。また、ヒップスラストにより大臀筋を限界まで刺激した後、ヒップエクステンションでさらに大臀筋を追い込むというやり方も非常に効果的です。
ワイドスクワットは、ヒップスラスト、ヒップエクステンションと同様に大臀筋やハムストリングスを鍛えることができるためです。
ワイドスクワットは、身体の上げ下げを行うことで大腿四頭筋や大臀筋という下半身の大きい筋肉を鍛えるエクササイズであり、ヒップスラスト、ヒップエクステンションと同様の部位を鍛えることを期待できます。実際に実施する場合には、ヒップスラスト、ヒップエクステンションを先に実施し、本番種目としてワイドスクワットを実施することで、大臀筋やハムストリングスを効率的に鍛えることを期待できます。
ワイドスクワットは、12〜15回を3セット実施します。
スクワットと同様に、ワイドスクワットも自重で実施する場合には、そこまで負荷が高くないため、トレーニング初心者の女性の方でもこれ以上の回数を実施できることもあり、比較的余裕のある回数設定になっています。その分、後述するポイント・コツをしっかり意識しながら実施することが重要です。また、ワイドスクワットは、股関節周りを動かすトレーニングであることから、高回数で実施すると怪我をする原因となるため注意が必要です。
トップポジションで膝をロックしない(=真っ直ぐにしない)。
身体をゆっくり下げる。
身体を下げすぎない。
背中をできるだけ倒さない。
臀部の動きを意識する。
スクワットは、ヒップスラスト、ヒップエクステンションと同様に大臀筋やハムストリングスを鍛えることができるためです。
スクワットは、身体の上げ下げを行うことで大腿四頭筋や大臀筋という下半身の大きい筋肉を鍛えるエクササイズであり、ヒップスラスト、ヒップエクステンションと同様の部位を鍛えることを期待できます。実際に実施する場合には、ヒップスラスト、ヒップエクステンションを先に実施し、本番種目としてスクワットを実施することで、大臀筋やハムストリングスを効率的に鍛えることを期待できます。
ノーマルスクワットは、12〜15回を3セット実施します。
ノーマルスクワットを自重で実施する場合には、そこまで負荷が高くないため、トレーニング初心者の女性の方でもこれ以上の回数を実施できることもあり、比較的余裕のある回数設定になっています。その分、後述するポイント・コツをしっかり意識しながら実施することが重要であり、それを意識できていないと、回数が少ない分だけ負荷が弱くなります。
トップポジションで膝をロックしない(=真っ直ぐにしない)。
身体をゆっくり下げる。
膝がつま先よりも前に出ないということを過度に意識しない。
背中を張ったまま実施する。
初動は臀部から動かすことを意識する。
ランジは、ヒップスラスト、ヒップエクステンションと同様に大臀筋やハムストリングスを鍛えることができるためです。
ランジは、足を前方もしくは後方に出すことで身体の上げ下げを行い大腿四頭筋や大臀筋という下半身の大きい筋肉を鍛えるエクササイズであり、ヒップスラスト、ヒップエクステンションと同様の部位を鍛えることを期待できます。実際に実施する場合には、ヒップスラスト、ヒップエクステンションを先に実施し、ランジを仕上げの種目として実施することで、効率的に大臀筋やハムストリングスを効率的に鍛えることを期待できます。
ランジは、まずは片足10〜12回3セット実施します。
ランジは脚を前、もしくは後ろに出して実施するためバランスを取り難く、これにより、エクササイズ強度は高いものに分類することができます。このため、一般的なトレーニングを実施する上での標準的な回数設定よりもやや少ない回数である10〜12回を3セット実施することを目標に実施しましょう。
上半身の床に対する角度を意識する。
身体を床に対してぎりぎりまで下げる。
脚を大きく出しすぎない。
手は太ももの上に乗せない。
ボトムポジジョンで静止する。
「膝はつま先より前に出さない」を意識しすぎない。
ヒップラインを引き上げるためには、お尻の筋肉である大臀筋を鍛えるアプローチと、大臀筋の下側にあるハムストリングスを鍛えるアプローチがあります。
大臀筋を直接鍛えることで、お尻の余分の脂肪を燃焼させ、メリハリのあるお尻を期待できます。
ハムストリングスを鍛えることで、お尻と太ももの境目をはっきりさせることを期待できます。
つまり、バーベルを使ったヒップリフトでは、これら2つの筋肉を合わせて鍛えることを期待できるため、効率的なヒップラインの引き上げを期待できます。
バーベルを使ったヒップリフトでは、ダイエット効果も見込むことができます。
その理由は、身体の中の筋肉の約60〜70%が下半身に集中しており、下半身の中でも臀部(お尻)が占める筋肉の割合が非常に高いためです。バーベルを使ったヒップリフトでは、臀部に加えて、ハムストリングスを鍛えることが期待できるため代謝が向上します。脂肪が燃焼するためには代謝の向上が不可欠なので、ダイエット効果が見込めます。
ただし、バーベルを使ったヒップリフトトは代謝向上を促すことまでしかできません。ウォーキングやランニングなどの有酸素運動と、食事制限もダイエットをする上では必須です。
前述した通り、バーベルを使ったヒップリフトは脊柱起立筋、腹横筋に刺激が入り鍛えることができるので、副次的に様々な効果が期待できます。
例えば、
姿勢改善。
腰痛改善。
運動機能の改善。
ウエストの引き締め効果。
臓器の位置の安定。
などです。
ヒップスラストは、お尻を上げようとする意識が働くほど、つま先で床を押し切ろうとする意識が働きがちですが、むしろ、脚裏をしっかりと使って上げた方が効果的です。
つま先で床を押し切ってしまうと、バーベルを使ったヒップリフトであるターゲットである臀部及びハムストリングスではなく、ふくらはぎに負荷が入ってしまいます、そのため、これらの部位にしっかりと刺激を入れるためには脚裏全体で床を押し切ることが重要であり、特に、かかとの方に意識を持って押すとより効果的なエクササイズになります。
バーベルを使ったヒップリフトでは、通常のヒップリフトと同様に、脚の置く位置によって下半身に負荷の入る部位が異なります。
ヒップスラストは、脚の置く位置によってどこに刺激が入るのかが変わり、身体の近くだと大腿四頭筋、身体から遠くだとハムストリングス、その間だと大臀筋になります。そのため、漫然に脚の置く位置を決めるのではなく、自身の意図をしっかりと持って脚の置く位置を決めるようにしましょう。
片脚で実施するバーベルを使ったヒップリフトは、シングルレッグヒップスラストといいます。シングルレッグヒップスラストは、ヒップスラストを行う際に予め膝の角度を90度にして片足を挙げた状態を作って実施するエクササイズです。
シングルレッグヒップスラストは、自重で実施することが多く、体重を片足で支えることから自重でも負荷を高めてエクササイズを実施できるというメリットがあります。
もちろん、バーベルを使って実施しても問題ありませんが、片脚で身体を支えていることからバランスが非常に崩れやすくなってしまっていることには留意しましょう。
バーベルを使ったヒップリフトでは、他の種目と同様に、可動域をしっかりと設定することが重要です。特にバックスクワットで重量設定が重すぎると、可動域が狭くなることに加えて、怪我をしやすくなります。
一般的に、バーベルを使ったヒップリフトは高重量を扱える種目であるとされており、女性でも場合によっては100 kg近くの重量を扱って実施しているケースがあります。ただ、この場合には、可動域を正確に設定できていない可能性がかなり高いです。
バーベルを使ったヒップリフトは、実は重量を扱う種目ではなく、限定的な重量で可動域をしっかりと使うことが非常に重要です。
バーベルを使ったヒップリフトに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。このため、最初は難しいですが、大臀筋、ハムストリングスの動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中での大臀筋、ハムストリングスの動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
バーベルを使ったヒップリフトに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスーパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
バーベルを使ったヒップリフトに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。呼吸は、筋肉の伸展と収縮を促し、バーベルを使ったヒップリフトでは、身体を下ろすときに息を吸い、身体を上げるときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは絶対に避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
ヒップアップ効果とは逆に、お尻が垂れ下がった状態とは、お尻の筋肉がお尻全体の重さを支えきれなくなった状態を指します。
お尻が垂れ下がると、まずはお尻の下部から垂れ下がり始め、徐々にお尻の上部も垂れ下がることで、最終的にはお尻全体が垂れ下がります。大臀筋は、単一の筋肉では身体の中で最も大きい筋肉であり、それに伴って、お尻周りの筋肉の中で最も大きい筋肉です。
このため、大臀筋を鍛えることでお尻を支える筋肉を強くすることは直接的にヒップアップ効果を促すことを期待できます。また、ハムストリングスを鍛えることで、お尻と太ももの境目がよりはっきりするようになり、間接的にヒップアップ効果を期待できます。
大臀筋、ハムストリングスは、単独の筋肉で比較した場合において、比較的、筋肉が大きい部位です。
筋群で比較した場合には大腿四頭筋が最も大きい筋肉であり、これにより、大腿四頭筋を鍛えることで代謝の改善を期待することができますが、これは大臀筋、ハムストリングスにも同様のことが言えます。筋肉の大きさについて、大腿四頭筋が非常に大きいということは有名ですが、大臀筋やハムストリングスも大きい部位であるということは実は盲点であるケースが多く、だからこそ、大腿四頭筋に加えて大臀筋やハムストリングスを鍛えることで効率的にダイエット効果を期待できます。
腰痛を改善、予防するためには、歩行のバランス及び姿勢を改善することが効果的です。
中臀筋は、前述したように、股関節の外転運動を司る筋肉であり、これにより、歩行する際に身体のバランスを保つ筋肉です。中臀筋が弱いと歩行時の身体のバランスが崩れ、これにより、歩くたびに上半身が左右に振れることになります。上半身は、腰で下半身と接続しているため、身体のバランスが崩れることで身体が左右に振れると腰に負荷がかかる状態になります。歩行は、多くの人が日常的に(しかも、比較的長い時間)実施する動作であることから、身体のバランスが崩れることによる腰への負担は小さくありません。
大臀筋は、体幹を下半身で支える働きがあり、身体を真っ直ぐ立たせる働きもあります。また、ハムストリングスは、骨盤と接続しています。ハムストリングスが凝ってしまうと、ハムストリングスが自然と骨盤を引っ張ってしまい、これにより、骨盤が後傾した状態、つまり、骨盤が正常時よりもズレた状態になり、姿勢が悪化します。以上より、大臀筋、ハムストリングスが十分に発達していないと姿勢が崩れる原因になり、これにより腰痛の原因となります。 以上を言い換えれば、中臀筋、大臀筋、ハムストリングスを鍛えて歩行のバランス及び姿勢を改善することができれば、腰痛の改善及び予防を期待できます。
ヒップエクステンションでは、大臀筋、中臀筋、ハムストリングスを鍛えることができるため副次的に以下の効果を期待できます。
スタイル改善。
運動パフォーマンスの改善。
太ももの引き締め効果。
冷え性、むくみの改善。
四つん這いで実施するヒップエクステンションでは、脚の重さで臀部及びハムストリングスにかかる負荷が決定します。そのため、脚の重量を重くすることができれば、自然とヒップエクステンションを実施した場合の負荷を増大させることが期待できます。
ここで、脚を選択的に重くする方法として、アンクルウェイトを使用する方法が挙げられます。アンクルウェイトとは、「ankle weight」、つまり、「脚首用の重り」であり、重りがバンド状になっているため脚首に巻きつけることができます。アンクルウェイトを用いることで脚の重量を重くすれば、ヒップエクステンションの効果を高めることが期待できます。ただし、重量をかけすぎるとフォームが崩れる原因になるため注意しましょう。
マシンを用いて実施するヒップエクステンションでは、上半身の重さで臀部及びハムストリングスにかかる負荷が決定します。そのため、上半身の重量を重くすることができれば、自然とヒップエクステンションを実施した場合の負荷を増大させることが期待できます。
上半身の重さを増大させる方法として、プレート、バーベル、チューブを使用する方法があります。以上の中で、バーベルを使用する方法が一番分かり難いと考えられ、バーベルを使用する方法では以下のようにすると、エクササイズ強度が大幅に増大します。
ただ、このように実施すると首を痛めやすいので注意して実施するようにしましょう。
トレーニングにおける「トップポジション」は身体が一番高い状態にあることを指します。ヒップエクステンションでは足を上げたときです。多くは筋肉がピンっと張った状態になります。反対に身体が一番低い状態にあることを「ボトムポジション」と言います。その間を「ミッドレンジ」と言います。 ヒップエクステンションでは、前述した様にトップポジションで最も負荷がかかります。このため、トップポジションで静止することを意識することで、ハムストリングスと臀部の収縮をさらに促すことができ、負荷を高めることが期待できます。
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