パイクプッシュアップは、自重で肩周りを美しく見せる効果を期待できる種目です。今回は女性向けのパイクプッシュアップの実施方法及びそのコツをご紹介します。
パイクプッシュアップとは、「pike pushup」、つまり、「槍のプッシュアップ」を意味します(「パイクプレス」と表現することもありますが、全く同一の種目を指します)。これだけでは全く意味不明ですが、実際にパイクプッシュアップが地面に頭を突き刺すように(実際には突き刺しませんが)して実施するエクササイズであることを考えると合点がいくかもしれません。
「プッシュアップ」というと、どうしても腕の筋肉、もしくは胸の筋肉を鍛える種目である印象が非常に強いですが、パイクプッシュアップはそれとは少し異なります。前述したように、わざと、槍の様にして頭を地面に突き刺すようなエクササイズを行うことで、主に、肩の筋肉で前部、中部、後部からなる三角筋の前部と中部を中心に鍛えます。
パイクプッシュアップは基本的には三角筋の前部、中部を鍛える種目です。このため、パイクプッシュアップでは肩を刺激し、肩周辺にある血流を促進することが期待できます。血流を促進すると老廃物が流れるようになることで、血管を圧迫しなくなり、これにより肩こりの改善を期待できます。ただし、パイクプッシュアップは、あくまでも三角筋前部、中部を鍛える種目であることから、より肩こりの改善を狙うならば、パイクプッシュアップに加えて三角筋後部や僧帽筋を鍛えることができる種目を実施するとなお効果的です。
パイクプッシュアップは、主に三角筋の前部を鍛えることができる種目であり、これに伴って、主に、肩の前側周辺部の脂肪の燃焼効果を期待できます。肩の周りは、背中やお腹と比較するとそこまで脂肪が付きやすい部位ではありません。このため、パイクプッシュアップを行っても積極的な体重の減少は期待できません。一方で、肩の周りの余分な脂肪を落とすと、バストと肩の境目がはっきりするようになり、メリハリのある肩からバストのラインを形成することを期待できます。
パイクプッシュアップは、前述したように、三角筋前部、中部を鍛える種目ですが、副次的に二の腕、すなわち上腕三頭筋にも刺激が入ります。
上腕三頭筋は、外側頭、長頭、内側頭から構成されています。外側頭は上腕三頭筋の外側の筋肉であり、長頭は上腕三頭筋の内側の筋肉であり、これらの内側に内側頭があります。内側頭と外側頭を合わせて短頭ということもあります。これらの筋肉は、主に、肘関節を伸展させる役割があります。
上腕というと、どうしても力コブである上腕二頭筋をイメージしがちですが、実際には上腕三頭筋の方が筋肉のサイズが大きいです。このため、腕の引き締め効果を狙うならば上腕三頭筋を鍛える方が効果的です。
パイクプッシュアップは、8〜10回を3セット実施します。
パイクプッシュアップは、可動域を狭くしたプッシュアップとも捉えることができますが、それでもエクササイズ強度はやや高めです。特に、女性の場合、男性と比較してどうしても腕の筋肉量が少ないため、実施するのが比較的難しいケースが多いです。このため、標準的なエクササイズでの推奨回数よりも少なめの8〜10回3セットを目標に実施しましょう。つま先立ちで実施するのが難しい場合には膝をついて実施しても問題なく、その場合にも8〜10回3セットを目標に実施し、問題なくできるようになったらつま先立ちで実施するようにしましょう。
パイクプッシュアップは、前述した通り、プッシュアップに分類されるため、エクササイズ強度はやや高めです。特に、女性の場合にはそれが顕著であることから、毎日実施することは推奨されません。女性がパイクプッシュアップを実施する目安としては、1週間に1回程度です。
パイクプッシュアップでは、他の種目と同様に、負荷が入っている可動域の中で実施することが重要です。パイクプッシュアップにおいて、可動域を完全に設定しようとした場合には、肘を完全に伸ばした状態から、おでこが床に付く場所まで下げ、再び肘を完全に伸ばす必要があります。しかし、肘が伸び切ってしまうと、身体の重さを肘で支えることになり、肩に刺激が入り難くなります。このため、肘は伸ばし切らずに実施することが重要であり、トップポジションにおける肘がやや曲がった状態に設定するようにしましょう。
パイクプッシュアップに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。このため、最初は難しいですが、三角筋の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中での三角筋前部の動きを意識するのがオススメです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
パイクプッシュアップに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
パイクプッシュアップに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。呼吸は、筋肉の伸展と収縮を促し、パイクプッシュアップでは、身体を下ろすときに息を吸い、身体を上げるときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは絶対に避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
女性がパイクプッシュアップを実施するためには、そもそも、パイクプッシュアップを実施するための基本的な筋肉をつける必要があり、以下のエクササイズが有効です。
プランクは、2の動作を45〜60秒間3セット実施します。
プランクは、体幹及びトレーニングに必要な非常に基本的な筋肉をつけるために有効なエクササイズですが、トレーニング初心者や女性の方にはやや負荷の高いエクササイズです。このため、まずは30秒を3セット実施することから始め、最終的には60秒を3セット実施することを目指しましょう。
上半身から下半身までを一直線にしてキープする。
脊柱起立筋により身体が曲がらないようにすることを意識する。
上半身は三角筋を使って支えることを意識する。
ハイプランクは、2の動作を45〜60秒間3セット実施します。
ハイプランクは、プランクと同様に体幹及びトレーニングに必要な非常に基本的な筋肉をつけるために有効なエクササイズです。プランクと比較してより腕の力が必要となるため、トレーニング初心者や女性の方には負荷の高いエクササイズです。このため、まずは20〜30秒を3セット実施することから始め、最終的には60秒を3セット実施することを目指しましょう。
上半身から下半身までを一直線にしてキープする。
脊柱起立筋により身体が曲がらないようにすることを意識する。
上半身は三角筋を使って支えることを意識する。
膝付きワイドプッシュアップは、8〜10回を3セット実施します。
膝付きのワイドプッシュアップは本来大胸筋を鍛えるエクササイズですが、副次的に三角筋にも刺激を入れることができるエクササイズです。女性が実施する場合、エクササイズの強度としてはかなり高いため、標準的なエクササイズでの推奨回数よりもかなり少ない8〜10回3セットを目標に実施しましょう。
実施中は常に肩甲骨を寄せたままにする。
トップポジションで肘を伸ばし切らない。
身体を下げるときはゆっくりにする。
上半身から下半身は常に一直線で実施する。
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