縫工筋は、骨盤の外側から膝の内側にかけて走る筋肉で、主に腰痛の予防に効果があります。今回は、縫工筋を鍛えるコツ及びその方法についてご紹介します。
縫工筋(ほうこうきん)とは、骨盤の外側から膝の内側にかけて斜めに走る筋肉であり、身体の中では最も長い筋肉であると言われています。縫工筋は、筋肉の名前に詳しい人からすると、他の部位の名称とは少し毛色が異なるように感じます。
縫工筋の「縫工(ほうこう)」とは、衣服の縫製作業を行う職人を指し、縫工はあぐらをかきながら作業を行っていました。この部位はあぐらをかくときに使う筋肉であることから、「縫工筋」と呼ばれるようになりました。
縫工筋は脚の前面にある筋肉であり、同じく、脚の前面にある大腿四頭筋等と比較するとマイナーな筋肉といえます。しかし、前述したように、骨盤にある腸骨と膝関節を結ぶ身体の中でも最も長い筋肉であり、鍛えておくことでこれらの関節の痛みを予防するとともに、ボディメイキングの観点で言えば非常に完成度の高い脚を実現することを期待できます。
腰痛が発生する原因は、様々ですが、その一つに骨盤が傾いてしまっていることが挙げられます。骨盤が傾いた状態は、骨盤が後傾している状態(猫背)、前傾している状態(反り腰)かが考えられます。
猫背は、前屈みの姿勢を長時間取ることで骨盤が後傾することで発生します。特に、現代人は、長時間デスクワークをすることが多いことから、長時間前屈みの姿勢をとることで猫背になってしまっている可能性が挙げられます。猫背は巻き肩の原因となるため (その逆も然りです)、肩こりの原因にもなります。
反り腰は、腹筋及び背筋のバランスが崩れ、前側にかかった重みを背中が側で支えるようにすることで骨盤が前傾することで発生します。特に、筋肉量が少ない女性に発生しやすいと言われています。
縫工筋を鍛えることで、以上のような骨盤のゆがみを改善することが期待できます。これにより、腰にかかる負担を軽減することを期待でき、腰痛の予防、改善を期待できます。
縫工筋は、腸骨から膝の内側まで伸びる筋肉です。
膝の内側は、
縫工筋
内転筋を構成する薄筋
ハムストリングスを構成する半腱様筋
の3つの筋肉が接続しており、その様子が鳥の脚の様であることから、鵞足(がそく)と呼ばれています。
3つの筋肉が接続していることから、これら3つの筋肉のバランスが崩れやすく、炎症が発生しやすい部位であると言われています。
鵞足を構成する縫工筋を鍛えることで、縫工筋の柔軟性を改善することを期待でき、膝痛の改善を期待できます。ただし、鵞足の痛みは他の筋肉が影響していることも考えられるため、縫工筋を鍛えても症状が改善しない場合には、他の2つの筋肉を鍛えることを視野に入れましょう。
人は、それぞれで身体のバランスが異なるため、これにより歩行の仕方もばらつきがあります。歩行は、日常的に行う動作であることから、「正しい」歩行をすることで身体にかかる負担を大きく減らすことができます。
縫工筋が発達していない場合に発達する歩行障害としては、「ニーイン・トゥーアウト」が挙げられます。「ニーイン・トゥーアウト」は、その名の通り、「ニー(=膝)」が「イン (=内側に)」入り、「トゥ (=つま先)」が「アウト(=外側に)」に入ってしまう現象です。
これは、太ももを斜めに縦断するように走ることで、太ももが内側に入らないように支えている縫工筋が衰えることで発生すると考えられます。そのため、縫工筋を鍛えることで、太ももを真っすぐに保ち、歩行を改善することで脚の筋肉や人体にダメージを与える可能性を低減させることを期待できます。
太ももの筋肉というと、大腿四頭筋が非常に一般的であり、確かにサイズの大きい大腿四頭筋を鍛えることで脚の印象を大きく変えることが期待できます。
一方で、ボディメイキングという視点では、脚に凹凸があった方が完成度が高いと判断することができます。足の凹凸感を改善するためには、いくつかの筋肉を鍛えることが考えられますが、その中でも、縫工筋を鍛えることは有効な手段の一つです。縫工筋は、骨盤から膝まで伸びる非常に長い筋肉であることから、鍛えることで脚の付け根から膝周辺部までの凹凸感を改善することを期待できます。
縫工筋を効果的に鍛えるためには、縫工筋に直接負荷が乗り易くなる状況を作りだす必要があります。縫工筋を含め、脚の筋肉を鍛えるエクササイズは、膝の屈曲と伸展を繰り返すことで鍛えることができる種目が多いですが、その際に、つま先がやや外側に向け、かつ、踵の動きを意識すると縫工筋に刺激が入りやすくなります。
これは、縫工筋が骨盤から膝の内側にかけて斜めに走る筋肉であるため、基本的には膝の内側に負荷が乗るようにすることで鍛えることが期待できるためです。一方、膝の内側に負荷が入るということは、膝を壊す危険性もあるということであるため、これを念頭において慎重にトレーニングを行う必要があります。
縫工筋は、前述した様に、骨盤から膝にかけて斜めに走る非常に長い筋肉です。このため、縫工筋は、大腿四頭筋、内転筋、腸腰筋と多くの筋肉と接触することになるため、縫工筋を鍛えるようとすると縫工筋以外にも刺激が入ることを避けるのが難しいと言えます。
そのため、縫工筋を鍛える際には、縫工筋のみに刺激を与えようとするのではなく、縫工筋以外にも刺激が入ってしまうことを許容しながらエクササイズを行う必要があります。その中で、前述したようなつま先のテクニックや、後述する縫工筋へのマインドマッスルコネクションを意識しながらトレーニングを行うことが重要です。
縫工筋を鍛えるエクササイズに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。
そのため、最初は難しいですが、縫工筋の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中での縫工筋の動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
縫工筋を鍛えるエクササイズに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
縫工筋を鍛えるエクササイズに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。基本的には、縫工筋が伸展するときに息を吸い、縫工筋を収縮時に息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
とにかく脚の動きをコントロールする。
脚を上げすぎない。
脚をギリギリまで下げる。
膝を真っ直ぐにしすぎない。
呼吸を意識する。
脚をゆっくり動かす。
ボトムポジションで脚を床につけない。
脚をゆっくり動かす。
ボトムポジションで脚を床につけない。
腸腰筋及び縫工筋で脚を動かすことを意識する。
トップポジションで膝をロックしない(=真っ直ぐにしない)。
身体をゆっくり下げる。
身体を下げすぎない。
背中は床に対して垂直に設定する。
臀部の動きを意識する。
重りの部分が大きいダンベルを使用する。
重量設定を重すぎないようにする。
とにかく脚の動きをコントロールする。
脚を上げすぎない。
脚をギリギリまで下げる。
膝を真っ直ぐにしすぎない。
呼吸を意識する。
ダンベルを挟むときはダンベルの重り部分をうまく使う。
重量設定を重すぎないようにする。
スクワットの可動域を維持できる位の重量設定で行う。
トップポジションで膝をロックしない(=真っ直ぐにしない)。
身体をゆっくり下げる。
身体を下げすぎない。
背中は床に対して垂直に設定する。
臀部の動きを意識する。
スクワットの可動域を維持できる位の重量設定で行う。
トップポジションで膝をロックしない(=真っ直ぐにしない)。
身体をゆっくり下げる。
身体を下げすぎない。
背中は床に対して垂直に設定する。
臀部の動きを意識する。
脚をゆっくり動かす。
ボトムポジションで脚を床につけない。
トレーニングチューブから脚が離れない様に注意する。
バンドの抵抗が強すぎるものを選ばない。
脚をゆっくり動かす。
ボトムポジションで脚を床につけない。
バンドの抵抗が強すぎるものを選ばない。
脚をゆっくり動かす。
ボトムポジションで脚を床につけない。
腸腰筋及び縫工筋で脚を動かすことを意識する。
負荷を高めたいならば、短目のトレーニングチューブを使う。
腸腰筋の動きを意識する。
重量設定を重すぎないようにする。
可動域を大きく設定する。
ボトムポジションで静止する。
トップポジションで静止する。
目線はシート背面に対して垂直。
教科書的なやり方は、座面に対して上半身は垂直(=骨盤が立った状態)。
脚首を常に立てる。
トップポジションでハムストリングスの伸展を、ボトムポジションでハムストリングスの収縮を意識する。
基本はつま先を立てる。
腸腰筋の動きを意識する。
エクササイズ中に大腿四頭筋の動きを意識する。
マシンによる特徴が大きく、負荷の感じ方が大きく異なる。
トップポジションで膝をロックしない (=真っ直ぐにしない)。
脚を置く位置はフットプレート真ん中もしくはそれよりもやや下側。
つま先はやや外側に設定するとフットプレートを動かし易い。
重量設定を高重量にしすぎない。
トップポジションで膝をロックしない。
スミスマシンの軌道に沿って実施する。
ボトムポジションを深く設定しすぎない。
椅子などの高さがあるものに対して、立った状態で片膝を置き、この状態で足先を外転させるようにすることで縫工筋のストレッチを促します。10〜20秒、両脚で実施しましょう。
体側になった状態で横になり、片手で上半身を支えるようにし、下側にある方の脚は90度くらいにして身体の前に配置します。上側にある方の脚の脛を持ち、外転させるようにすることで縫工筋のストレッチを促します。10〜20秒、両脚で実施しましょう。
片膝立ちになり、両手を前に出して床に付けた状態になり、片膝立ちになっていない方の脚は伸ばします。伸ばしている方の脚の方向に重心をのせ、その状態で後ろの脚を曲げ、脛を持ち、脛を外転させるようにすることで縫工筋をストレッチを促します。10〜20秒、両脚で実施しましょう。
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