レッグレイズの負荷を大幅に高めた種目として、ハンギングレッグレイズがあります。今回は、ハンギングレッグレイズのやり方、注意点、応用種目等についてご紹介します。
ハンギングレッグレイズとは、英語「hanging leg raise」が語源で、「ぶら下がりながら、脚を上げる」という意味であり、これが本トレーニングを端的に表しています。
ハンギングレッグレイズは、なんらかの物にぶら下がって実施する必要があるため、比較的高さのある鉄棒や、ジムに置いてあるチンニング台などを使う必要があります。最近では、自宅で実施するためのトレーニング用具も販売されているようですが、自宅の内装を傷つける可能性が高いこと、また、トレーニング中に外れたときの危険度を考えると、基本的には自宅で実施するのは難しいといえます。
ハンギングレッグレイズは、数多くある腹筋のエクササイズの中でも、負荷の高いエクササイズに分類され、このことから、中・上級者向けのエクササイズです。
腹直筋とは、お腹の部分にある筋肉です。腹直筋と聞くと、なんとなく馴染みのない感じがしてしまいますが、所謂、我々が「腹筋」と呼ぶ筋肉は腹直筋を指します(厳密には、腹筋は、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋の総称であると想定されます)。腹直筋は、上部、中部、下部からなります。
筋トレを少ししたことがある人ならば、「シックスパック」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、シックスパックとは特に腹直筋が身体の表面に浮き出た状態を指します(シックスパックは人によって様々な形をしており、エイトパックだったり、フォーパックだったりします)。
腹直筋下部はハンギングレッグレイズのメインターゲット部位です。
腹斜筋は、肋骨から骨盤にかけて走る筋肉である、外腹斜筋と内腹斜筋の総称です(イメージとしては横腹やや上についている筋肉です)。
外腹斜筋と内腹斜筋はその名前が指す通り、外腹斜筋が外側にあり、内腹斜筋は内側(深層)にあります。外腹斜筋の方が肋骨から骨盤に走っており、内腹斜筋は横腹に走っています。腹斜筋は、ひねる動作と上半身の固定(体幹)に関わる重要な筋肉です。
腹斜筋は、身体の中で筋肉のサイズが小さいと言われている腹筋の中でも、さらに小さい筋肉であることから、腹斜筋のエクササイズは存在するものの的確に刺激を与えることが比較的難しいのが特徴です。外腹斜筋と内腹斜筋をバラバラに鍛えることはさらに困難で、同時に鍛えるのが普通です。
腹斜筋はハンギングレッグレイズのサブターゲット部位です。
腸腰筋は、大腰筋、小腰筋、腸骨筋の3つの筋肉を総称した筋肉であり、筋肉の分類としてはインナーマッスルに分類され、上半身と下半身をつなぐ役割をしています。一般的に、腸腰筋はインナーマッスルに分類され、鍛えすぎて見た目が変化することはほぼありません。
腹斜筋はハンギングレッグレイズのメインターゲット部位です。
代謝は「活動代謝」、「食事誘発性熱産生代謝」、「基礎代謝」の3つに分類することができます。
活動代謝は、身体を動かすことでエネルギーを代謝することを指し、筋肉量が多いと活動代謝は改善します。
食事誘発性熱産生は、食事を摂取することでエネルギーを代謝することを指し、摂取する食べ物に依存します。
基礎代謝は、呼吸したり心臓を動かしたりする際にエネルギーを代謝することを指し、寝ていても座っていても消費されるエネルギーを指します。
ハンキングレッグレイズで鍛えることができる腹直筋は、身体の中ではそこまで大きな筋肉ではなく、腹直筋下部はその中でも非常に小さい筋肉です。そもそも、腹直筋が分類される腹筋は身体の中でも大きい筋肉ではないため、例えば、大腿四頭筋や大臀筋といった身体の中で筋肉が大きい部位と比較すると、鍛えることでの代謝の改善効果は限定的です。
それでも、腹直筋は、腹筋の中では最も大きい筋肉であり、これにより、鍛えることで基礎代謝の改善効果を期待できます。代謝を改善するということは、脂肪を燃焼させやすい身体を作るということであり、これによりダイエット効果を期待できます。
ハンキングレッグレイズで腹直筋を鍛えることで、特にお腹周りについている脂肪を燃焼することを期待できます。これにより、お腹周りをすっきりさせることが期待できますが、腹直筋だけを鍛えるということで得られる効果は限定的です。腹直筋を鍛えてお腹周りをすっきりさせたい場合には、腹直筋を鍛えるエクササイズに加えて有酸素運動や食事制限を行う必要があります。これは、シックスパックを作りたい際にも同様であり、シックスパックをしっかり出したい場合にはかなりの計画的な有酸素運動、もしくは食事制限を実施する必要があります。
腹直筋を鍛えることでお腹周りをすっきりさせるということは注意も必要です。つまり、腹直筋をつけることでウエストが太くなってしまう可能性もあるという点です。このため、ウエストを太くしたくないという方は、むしろ腹直筋を鍛えすぎないように注意する必要があります。
ハンキングレッグレイズで腹斜筋を鍛えるメリットとして、特に男性にいえることですが、完成度の高い腹筋に見えるようになることが挙げられます。
腹筋というと、多くの人はシックスパックに代表される腹直筋をイメージしがちです。確かに腹直筋を鍛え、体重を落とすことでシックスパックを作ることはできますが、それだけでは、完成度は高い腹筋とはいえません。肋骨周りから横腹にかけて走る腹斜筋を鍛えてこそ、完成度の高い腹筋のようにみえます。
また、腹斜筋を鍛えることは、いわゆる男性らしい逆三角形の身体作りにも寄与します。
ハンキングレッグレイズで鍛えることができる腸腰筋は、鍛えることで腰椎のS字状を維持することを期待できます。人間の腰は、通常S字状態になっていて、それによって体重を支えることができています。姿勢が悪い状態とはS字が崩れており、この状態は猫背もしくは反り腰に分類できます。
猫背は、前屈みの姿勢を長時間取り、骨盤が後傾してしまうことが原因になります。特に現代人は、長時間デスクワークをすることが多いので、猫背になる人が多いです。
反り腰は、腹筋及び背筋のバランスが崩れ、前側にかかった重みを背中側で支えるようになり、骨盤が前傾することが原因になります。特に、筋肉量が少ない女性がなりやすいと言われています。
以上より、腸腰筋を鍛えることで腰椎がS字状にできることを維持することができれば、姿勢が悪いとされている猫背及び反り腰を改善することができ、これにより、姿勢の改善を期待できます
腹直筋は、腹筋に分類される筋肉であり、腹筋は背筋とともに上半身を支える筋肉です。これにより、腹直筋下部が分類される腹直筋を鍛えることで上半身をしっかり支えることができるようになります。
腰痛が発生するメカニズムは、上半身の重さを支えることができなくなることで姿勢が悪化し、これにより、腹筋と背筋のバランスが崩れることで、上半身と下半身の付け根である腰に負担がかかってしまうということです。特に、背筋は日常的に使用する機会が多い筋肉であるものの、腹筋は意識的に使用しないと鍛えることが難しい部位です。以上から、腹直筋を鍛えることで腹筋と背筋のバランスを改善することを期待でき、これにより、腰痛の予防はもちろんですが、既に腰痛を抱えている方も腰痛を改善することを期待できます。
ハンキングレッグレイズは、腹直筋、腸腰筋を鍛えることができるため、その他の効果として以下を期待できます。
便秘の改善。
内臓を正しい位置に保つ。
ヒップアップ効果。
運動能力向上、歩行能力の改善。
ハンギングレッグレイズはまず、肩幅よりもやや広めに持ち手を設定してぶら下がります。
慣れないうちは、肩幅くらいでも問題はありませんが、腹斜筋にも刺激を与えることを想定した場合には、肩幅よりもやや広めでぶら下がる方がおすすめです。広げれば広げるほど負荷が高まりますが、広げすぎると落下する恐れがあるので注意しましょう。
ハンギングレッグレイズは、そのエクササイズの特性として、「ぶら下がる」という動作がどうしても発生するため、腹筋の限界が来る前に握力の限界がきてしまうということが多々あります。その場合には、ハンギングレッグレイズ用の補助ベルト、リストストラップ、パワーグリップを使うのがおすすめです。
次に、お尻を後ろに動かすイメージで脚を上げます。
ブランコをイメージするとわかりやすいですが、脚を前に振り上げると、それに伴ってお尻が前に出てしまいます。ハンギングレッグレイズでも同様のことがいえ、このままだと脚を動かすたびに身体が前後してしまい、エクササイズに集中できません。
そのため、脚を上げる際には、あえて、お尻を後ろに動かすイメージを持ちながら実施することが重要です。
最後に脚を元の位置に戻して、終了です。
ハンギングレッグレイズの回数は、5回×3セットを目安に実施しましょう。
冒頭で述べた通り、ハンギングレッグレイズは負荷の高いエクササイズであるため、一般的にトレーニングで有効とされている12〜15回を実施するのが難しいエクササイズです。
エクササイズの頻度としては、ハンギングレッグレイズの強度が高いことから毎日実施する必要はなく、隔日で実施すればよいでしょう。また、腹筋は特に色々な刺激が入ることが重要です。毎日同じ腹筋運動をするのではなく、日によって違うエクササイズを実施するのが効果的といえます。
ハンギングレッグレイズは、足を上げる慣性力で身体が前後に動きやすいという問題があります。
ハンギングレッグレイズは、何も意識しないで実施すると、身体が常に前後に揺れた状態になります。身体が前後に揺れている分、特に足をあげる動作では反動を使うことでエクササイズ強度が低下します。
また、身体が前後に揺れているためトレーニング中の集中力も低下し、腹直筋を意識することが難しくなっててしまいます。
そのため、ハンギングレッグレイズでは動きを終始コントロールする必要があります。具体的には、足を上げることで前方に身体が動くため、釣り合いを取るためにやや後方に動くことを意識しながら足を上げるようにしましょう。
前述した身体の動きをコントロールと関連しますが、脚の上げ下げの速度も大変重要です。脚を上げるときは重力に逆らって速く動作をすると効果が上がります。脚を下げるときは、これまた重力に逆らってゆっくりと動作をすると効果が上がります。
トレーニング用語で重力に逆らう(上げる)動作をポジティブムーブメント、重力と同じ方向の(下げる)動作をネガティブムーブメントといいます。ポジティブムーブメントは速く、ネガティブムーブメントは遅く、がエクササイズにおいて鉄則です。
以上はハンギングレッグレイズでも同様です。脚の速度をしっかりコントロールすることで、身体の前後動きをコントロールすることができ、集中してハンギングレッグレイズを実施することを期待できます。
ハンギングレッグレイズにもいくつかやり方がありますが、基本的に脚を上げすぎると腰を痛めやすいです。やり方によっては、つま先が持ち手に付く位まで上げるやり方もありますが、これはかなり難度が高く上級者向けです。そのため、トップポジションは脚が床と平行かやや上側程度に設定することが重要です。
トレーニングにおける「ボトムポジション」とは、身体が一番低い状態にあることを指します。スクワットではしゃがんだ状態です。多くは筋肉がピンっと張った状態です。反対に「トップポジション」は身体が一番高い状態にあることを指します。その間を「ミッドレンジ」といいます。
また、脚を上げすぎるやり方は腰にかかる負担が増大するため、腰を痛めている方は特に注意が必要です。
筋トレでは「動作中にターゲットとなる部位に負荷をかけ続ける」が非常に重要です。言い換えれば、負荷が抜けてしまう瞬間(休憩できる時間)を作らないことが重要といえます。
この基本に則れば、ハンギングレッグレイズもボトムポジションからトップポジションまで、腹直筋に常に負荷がかかっている必要があります。脚をぶらーんと下げてしまうと、負荷が完全に抜けてしまうので避けましょう。
以上を避けるために、ボトムポジションでは上半身に対して足がやや角度が付いた状態に設定するようにしましょう。
ハンギングレッグレイズに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。
このため、最初は難しいですが、腹直筋下部の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中での腹直筋の動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
特に、ハンギングレッグレイズの場合には、ボトムポジションでしっかりと腹直筋を伸展させ、トップポジションでしっかりと腹直筋を収縮させることを意識することが重要です。
ハンギングレッグレイズに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスーパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
ハンギングレッグレイズに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。呼吸は、筋肉の伸展と収縮を促し、ハンギングレッグレイズでは、下半身を下ろすときに息を吸い、下半身を上げるときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
「ニー(knee)」は膝を意味します。
ぶら下がった状態で、膝下と膝上の角度が90度にし、太ももを上体に近づけるエクササイズです。ハンギングレッグレイズが脚を真っ直ぐにして実施したのに対して、ハンギングニーレイズは膝を曲げた状態で膝を胸につけるようにして実施します。
ハンギングニーレイズのターゲットは、腹直筋下部と腹斜筋です。
脚が曲がっている分だけ負荷が小さく、初心者向けのハンギングレイズです。
ハンギングニーレイズツイストは、ハンギングニーレイズを行う際に脚をツイストさせながら上げることで腹斜筋の収縮を促し、これにより腹斜筋を刺激するエクササイズです。
ハンギングニーツイストのターゲットは、腹斜筋、腹直筋下部、腸腰筋です。
脚が曲がっている分だけ負荷が小さく、後述するハンギングレッグレイズツイストと比較して初心者向けです。
ハンギングレッグツイストは、ハンギングレッグレイズを行う際に脚をツイストさせながら上げることで腹斜筋の収縮を促し、これにより腹斜筋を刺激するエクササイズです。ハンギングニーツイストと比較して脚が伸びている分ツイストはさせ難いですが、脚が伸びている分負荷が高いエクササイズです。
ハンギングニーレイズのターゲットは、腹斜筋、腹直筋下部、腸腰筋です。
ハンギングニーツイストよりも負荷は高く、中級者向けの種目です。
ハンギングニートゥエルボーは英語で「hanging knee to elbow」であり「膝を肘へ」という意味です。ハンギングニーレイズを実施する際に、膝を肘に付く位置まで上げるエクササイズです。通常のニーレイズと比較して、腹直筋の収縮が大きくなるため、これにより負荷も増大しますが、腰を丸める必要があることから腰を痛めやすい種目です。
ハンギングニートゥエルボーのターゲットは、腹直筋下部、腹斜筋、腸腰筋です。
脚が曲がっている分、後述するハンギングトウトゥバーよりも負荷は小さいですが、それでも負荷は十分に高く、これにより、中上級者向けの種目です.
ハンギングトウトゥバーは英語で「hanging toe to bar」であり「つま先をバーへ」という意味です。ハンギングレッグレイズを実施する際に、手で握っているバーにつま先が付くように上げるエクササイズです。
上体をほぼ動かさずに実施するのが理想的ですが、非常に難度が高いので、実際には少し身体が前後に揺れてしまうのが一般的です。通常のレッグレイズと比較して、腹直筋の収縮が大きくなるため、これにより負荷も増大しますが、腰を丸める必要があることから腰を痛めやすい種目です。
ハンギングトウトゥバーのターゲットは、腹直筋下部、腹斜筋、腸腰筋です。
負荷はかなり高く、上級者向けの種目です。
ハンギングワイパーは、ハンギングトウトゥバーの派生種目です。ハンギングトウトゥバーでのトップポジションを維持した状態で、車のワイパーのように下半身を左右に振るエクササイズであり、これにより腹斜筋を集中的に刺激します。効率的に実施するには、下半身を振った慣性力で実施するのではなく、身体を左右に振ったときに1回1回静止することが重要です。
ハンギングニーレイズのターゲットは、腹斜筋、腹直筋下部、腸腰筋です。
負荷はかなり高く、上級者向けの種目です。
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