ヒップフレクションは、膝の上げ下げを行うことで腸腰筋を鍛える種目です。今回は、ヒップフレクションのやり方及びコツについてご紹介します。
ヒップフレクションは英語で「hip flection」で、「お尻が曲がること」を意味しています。
ヒップフレクションは様々なやり方がありますが、基本的な動作は膝を上げることでお尻が曲がった状態を作り出すことで、立ったまま実施したり、仰向けで実施したり、マシンを用いて実施したりと多くのバリエーションがあります。
ヒップフレクションは、基本的には太ももの上げ下げを行うだけの種目であるため、エクササイズ強度はそこまで高くなく、筋トレ初心者や女性でも問題なく実施することができます。
腸腰筋は、大腰筋、小腰筋、腸骨筋の3つの筋肉を総称した筋肉であり、筋肉の分類としてはインナーマッスルに分類され、上半身と下半身をつなぐ役割をしています。一般的に、腸腰筋はインナーマッスルに分類され、鍛えすぎて見た目が変化することはほぼありません。
大腰筋は、大腿骨と背骨をつなぐ筋肉です。大腿骨は太ももの筋肉であり、これを背骨と接続することで、脚を上げる働きに関与します。大腰筋が衰えてくると、脚がしっかり上げることが難しくなり、これにより歩いていると物に躓きやすくなります。
小腰筋は、大腰筋と同様に大腿骨と背骨をつなぐ筋肉ですが、かなり特殊な筋肉です。というのも、小腰筋は全ての人にある筋肉ではなく、およそ半数の人しかない筋肉なんです!
大腰筋と同様に太ももを上げる働きがあります。半数近くの人がない筋肉なので、そこまで大きな力があるわけではありません。
腸骨筋は、腸骨の内側についている筋肉です。腸骨筋は、股関節の外旋運動や屈曲に関与します。腸骨筋が衰えてくると、股関節周りの動きに無理が生じ、腰痛の原因となる場合があります。
腸腰筋は、S字状の腰椎を維持する役割があります。
人間の腰は、通常S字状態になっており、これにより体重を支えます。一般的に「姿勢が悪い」状態とは、腰のS字状態が崩れている場合で、猫背と反り腰があります。
猫背は、前屈みの姿勢を長時間取ることで骨盤が後傾することで発生します。特に現代人は長時間デスクワークをすることが多いことから、猫背になってしまう人が多いです。猫背は巻き肩の原因となるため 、肩こりの原因にもなります。
反り腰は、腹筋または背筋のバランスが崩れ、前側にかかった重みを背中が側で支えるようにすることで骨盤が前傾することで発生します。特に、筋肉量が少ない女性に発生しやすいと言われています。猫背だと反り腰になりやすいので、ワンセットということもできます。
ヒップアップ効果とは逆に、お尻が垂れてしまうことは、骨盤の位置関係が関係しています。これは、お尻の筋肉が骨盤とその周辺部と接続しているためです。
腸腰筋が衰えて姿勢が悪くなる (特に猫背になってくる)と、骨盤が後傾することでお尻が垂れ下がる原因になります。これは、言い換えれば、腸腰筋を鍛えて姿勢を改善することでお尻が垂れ下がることを防ぎ、これによりヒップアップ効果を期待できます。ただし、よりヒップアップ効果を狙うならば、大臀筋及びハムストリングスも鍛えるとより効果的です。
下っ腹が出てしまっている原因はいくつか理由がありますが、特に「お腹以外で目立って肥えている部位がないのに、下っ腹が出てしまっている」という方は、上半身と下半身をつなぐ腸腰筋の状態を見直すことが効果的です。
下っ腹が出ている状態というのは骨盤のバランスが崩れている状態であり、腸腰筋を鍛えることで骨盤のバランスを矯正できるため、ぽっこりお腹を改善することを期待できます。ただし、前述した通り、腸腰筋を鍛えたからと言って、必ずしもぽっこりお腹を改善できるわけではなく、改善しない場合には、そもそもの体重を落とすために食事制限、有酸素運動の実施を行う必要があります。
腸腰筋は膝を上げる動作に関係しているため、腸腰筋を鍛えることで膝を上げる動作がより俊敏になり、スプリント系などの種目において運動能力を向上することを期待できます。
また、腸腰筋の中でも大腰筋及び小腰筋は、太ももを上げる作用があります。太ももをしっかりあげることができるということは、階段を上る動作が楽になったり、ちょっとした段差に躓きにくくなるということも期待できます。このことから、腸腰筋を鍛えることで日々の生活の中で歩行能力を改善することを期待できます。
代謝は「活動代謝」「食事誘発性熱産生代謝」「基礎代謝」の3つに分類することができます。
活動代謝は、身体を動かすことでエネルギーを代謝することを指し、筋肉量が多いと活動代謝は改善します。食事誘発性熱産生は、食事を摂取することでエネルギーを代謝することを指し、摂取する食べ物に依存します。基礎代謝は、呼吸したり心臓を動かしたりする際にエネルギーを代謝することを指し、寝ていても座っていても消費されるエネルギーを指します。
腸腰筋に代表されるインナーマッスルは体温の維持に関係していて、鍛えることで基礎代謝が向上します (体温が1度上昇することで代謝量は13%程度向上すると言われています)。
筋トレ初心者のヒップフレクションの目安の重量は10〜15 kg程度です (自身の体重にもよります)。
ヒップフレクションは筋トレ初心者でも比較的重量を扱うことができます。以上では重量は10〜15 kgと述べましたが、実際には、自身の筋肉量に合わせて12〜15回をきちんと(ある程度余裕のある形で)実施できる重量を選択するようにしましょう。
ヒップフレクションに少し慣れた方のヒップフレクションの目安の重量は片手で15〜25 kg程度です(自身の体重にもよります)。
ヒップフレクションに少し慣れると腸腰筋の発達により、扱うことができる重量が伸びます。ただし、少し慣れた場合でもむしろフォームをしっかり意識するという意味で、やや軽い重量で行うようにしましょう。以上では15〜25 kgを挙げましたが、この重量はあくまでも目安であり、前述したように実際には自身の筋肉量に合わせてヒップフレクションを15〜18回実施できる重量を選択するようにしましょう。
筋トレ上級者のヒップフレクションの目安の重量は50 kg以上です(自身の体重にもよります)。
筋トレ上級者をどのように定義するかで変わってきますが、一般的に、ヒップフレクションで50 kg以上を正確なフォームで実施できれば比較的筋トレ上級者であると言えます。ただし、これはあくまでも「正確なフォームで実施した場合」の重量です。膝を上げる大きさが小さくなると高重量を扱いやすくなることから、きちんと膝を上げて実施するのがおすすめです。
筋トレ初心者の場合、ヒップフレクションは何れの場合でも片足12〜15回3セット実施しましょう。
ヒップフレクションはそこまでエクササイズ強度の高い種目ではなく、回数をやや多くすることで負荷を高める種目です。ただ、筋トレ初心者の場合にはしっかりとフォームを確認するという意味で、片足12〜15回を両足で3セットをしっかり実施するようにしましょう。
ヒップフレクションに少し慣れた方の場合、ヒップフレクションは片足15〜18回3セット実施しましょう。
ヒップエクステンションに少し慣れると腸腰筋の発達により、より高回数を実施できるようになります。この場合には、初心者のときよりもやや回数を増やして片足15〜18回3セット実施しましょう。
筋トレ上級者の場合、ヒップフレクションをその他のエクササイズと組み合わせて実施するようにしましょう。
筋トレ上級者の場合、ヒップフレクションをウォーミングアップのセットとして、ニートゥエルボー、レッグレイズ、バックランジなどの腸腰筋を鍛えることができるその他のエクササイズと組み合わせて実施しましょう。具体的には、ヒップフレクションを15〜18回を3セットを実施してから、その他のエクササイズを実施するようにしましょう。
ヒップフレクションのターゲット部位である腸腰筋は、上半身と下半身の付け根に相当する部位です。そのため、膝をしっかりと上げる動作によって腸腰筋がしっかりと収縮するようになるため、ヒップフレクションでもエクササイズ強度を高めることを期待できます。
自重で実施する場合には、ヒップフレクションで膝が上がらなくなることはほとんどありませんが、後述するように、チューブを使用した場合や、マシンを使用した場合には負荷の大きさによっては膝が上がらなくなります。そのようになると、腸腰筋の可動域を十分に使用することができなくなっているため、負荷を減らしてヒップフレクションを実施するようにしましょう。
ヒップフレクションを立って実施する場合、もしくは仰向けになって実施する際に、チューブを使用することでエクササイズ強度を高めることを期待できます。
実際にチューブを使ってヒップフレクションを実施する場合には、以下のように実施します。
立った場合は以下のようにして実施します。
仰向けになった場合は以下のようにして実施します。
何れの方法も、チューブは床に対してしっかりと固定されている部分に固定するようにしましょう。また、トレーニングチューブの抵抗が強すぎると膝をしっかりと上げることが難しくなるため注意しましょう。
トレーニングにおける「トップポジション」は身体が一番高い状態にあることを指します。ヒップフレクションでは膝を上げたときです。多くは筋肉がピンっと張った状態になります。反対に身体が一番低い状態にあることを「ボトムポジション」と言います。その間を「ミッドレンジ」といいます。
ヒップフレクションでは、前述した様にトップポジションで最も負荷がかかります。このため、トップポジションで静止することを意識することで、腸腰筋の収縮をさらに促すことができ、負荷を高めることが期待できます。
ヒップフレクションに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。
このため、最初は難しいですが、ダンベルクロスランジで鍛えている部位の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中でのそれらの筋肉の動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
ヒップフレクションに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量、身体の動きをコントロールすることになります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
ヒップフレクションに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。ヒップフレクションでは、膝を上げるときに息を吐き、戻すときに息を吸います。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
ニートゥエルボーは、ヒップフレクションで鍛えることができる腸腰筋を鍛えることができるためです。
ニートゥエルボーは、ヒップフレクションと同様に腸腰筋を鍛えることができます。負荷の大きさを比較した場合、ニートゥエルボーの方が大きくなります。実際に実施する場合には、ヒップフレクションをウォーミングアップ種目として実施し、ニートゥエルボーを本番種目として実施することで腸腰筋を効率的に鍛えることを期待できます。
ニートゥエルボーは、片足15〜18回3セット実施します。
ニートゥエルボーは、有酸素運動的な側面が強い種目ですが、腸腰筋を鍛えることができます。1回1回の負荷はそこまで高くないため、1回を丁寧に、しっかりと実施するようにしましょう。実際に実施する場合には、標準的な筋トレの回数よりもやや回数が多い15〜18回を実施しましょう。
膝をしっかり上げる。
上半身をしっかりツイストさせる。
レッグレイズは、ヒップフレクションで鍛えることができる腸腰筋を鍛えることができるためです。
レッグレイズは、ヒップフレクションと同様に腸腰筋を鍛えることができます。負荷の大きさを比較した場合、レッグレイズの方が大きくなります。実際に実施する場合には、ヒップフレクションをウォーミングアップ種目として実施し、レッグレイズを本番種目として実施することで腸腰筋を効率的に鍛えることを期待できます。
レッグレイズは、15〜18回3セット実施します。
レッグレイズは、腹直筋下部を鍛えるための標準的な腹筋のエクササイズです。基本のレッグレイズはそこまで負荷が高くないため、標準的な筋トレの回数よりもやや回数が多い15〜18回を実施します。
とにかく足の動きをコントロールする。
腹直筋下部を鍛えるときよりも、トップポジションをやや深めに設定する。
足を床ぎりぎりまで下げる。
膝を真っ直ぐにしすぎない。
呼吸を意識する。
バックランジは、ヒップフレクションで鍛えることができる腸腰筋を鍛えることができるためです。
バックランジは、ヒップフレクションと同様に腸腰筋を鍛えることができます。負荷の大きさを比較した場合、バックランジの方が大きくなります。実際に実施する場合には、ヒップフレクションをウォーミングアップ種目として実施し、バックランジを本番種目として実施することで腸腰筋を効率的に鍛えることを期待できます。
バックランジは、まずは、片足10〜12回3セット実施します。
バックランジは脚を後ろに出して実施するためバランスを取り難く、これにより、エクササイズ強度は高いものに分類することができます。このため、一般的なトレーニングを実施する上での標準的な回数設定よりもやや少ない回数である10〜12回を3セット実施することを目標に実施しましょう。
上半身の床に対する角度を意識する。
身体を床に対してぎりぎりまで下げる。
脚を大きく出しすぎない。
ボトムポジジョンで静止する。
手は太ももの上に乗せない。
「膝はつま先より前に出さない」を意識しすぎない。
腸腰筋を鍛えたい場合には脚を振り上げる。
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