前脛骨筋は、膝の外側から脚の裏に走る筋肉で、土踏まずのアーチを形成し、歩き方を改善する役割があります。今回は、前脛骨筋を鍛えるコツ及びその方法をご紹介します。
前脛骨筋(ぜんけいこつきん)は、「脛骨(脛の骨)」の「前」にある筋肉という名前から推察される通り、膝下で膝の外側から脚の甲の付け根を通り、脚の裏にまで走る筋肉です。
前脛骨筋は、土踏まずを引き上げる働きがあります。これは、少し分かりにくいかもしれませんが、つま先を引き上げることで脚裏にアーチを作ることで、「土踏まず」と呼ばれる部分を形成します。
前脛骨筋を鍛えることで、運動パフォーマンスを上げる他、高齢者の方には転倒防止の作用があります。また、扁平足や外反母趾を予防する効果があります。
前脛骨筋は、前傾姿勢になっていると負担がかかる筋肉です。一般的に、日常生活で前傾姿勢になる機会は少ないため、これにより、積極的に負荷が入るわけではありませんが、終始前傾姿勢が必要となる競技で非常に負荷がかかるようになります。具体的には、スケートやスキーなどでは、空気抵抗を減らして速度を上げるために前傾姿勢になる機会が多く、これにより前脛骨筋が積極的に働くようになります。このような競技では、前脛骨筋を鍛えることで、前傾姿勢を取っても疲れ難くなり、これにより、前傾姿勢をより効率的に実施することができるため、このような競技における運動パフォーマンスが向上することが期待できます。
前脛骨筋を鍛えることで、前述したように足裏のアーチを保ちます。この脚裏のアーチですが、そもそも、人間の身体の構造上、床もしくは地面に接するような構造になっていません。これにより、ジャンプやランなどで刺激が入ると、その刺激を逃しきれず、これが膝やふくらはぎに到達し、怪我の原因となる場合があります。このため、膝、ふくらはぎの怪我を防ぐためには、前脛骨筋を鍛えることで脚裏のアーチをしっかり作り、これにより、脚裏からの衝撃をふくらはぎ、膝に到達させないことが重要です。
転倒する原因にはいくつか種類があり、その代表的な原因として、脚が上がっていないことが挙げられます。前脛骨筋は、脚首を動かす作用があるため、鍛えることで脚首が上がり易くなります。また、歩行中の前後の動揺 (=身体が前後に揺れてしまうこと)を防ぎます。以上の作用により、特に高齢者の方は前脛骨筋を鍛えることで転倒の予防を期待できます。
以上は、脚首の話になりますが、そもそも転倒を予防するためには脚全体を高く上げることができるようになることが必要です。そのためには、腸腰筋を構成する大腰筋を鍛えることも有効です。このことから、転倒予防をするためには、前脛骨筋に加えて大腰筋を鍛えることも有効です。
扁平足とは、脚裏の土踏まずのアーチがなくなることで、脚裏が地面もしくは床に完全についてしまっている状態です。前述した通り、土踏まずがなくなってしまうと、地面もしくは床に接触した衝撃が、ふくらはぎ、膝等に直接伝達されるため怪我の原因となります。
外反母趾とは、脚の親指が小指側に曲がってしまっている状態です。親指が小指側に曲がることで、指の付け根部分がでっぱり、これが靴の内側と接触を繰り返すことで炎症を引き起こし、靴が履けなくなるという状態を作ることもあります。
両者を比較すると、一見、全く関係のないような印象を受けますが、実は、扁平足になると外反母趾になりやすい傾向があります。このため、前脛骨筋を鍛えることで脚裏のアーチをしっかり作り出すことで扁平足を予防し、これにより外反母趾の予防を期待できます。
前脛骨筋は、ヒラメ筋や腓腹筋と同様にふくらはぎに分類される筋肉です。このため、トレーニングの原則として、筋肉を発達させるためには高重量を扱うことは原則ですが、前脛骨筋,つまり,ふくらはぎの筋肉では、かなりの上級者でないと高重量を扱ってもなかなか発達させづらいです。この理由としては、後述するように、ふくらはぎの筋肉では完全伸展、完全収縮を意識することが特に重要である部位であることから、高重量を扱った場合においてそれを意識するのがかなり難しくなるためです。このことから、ふくらはぎを鍛える際には重量を扱うよりも回数を重視して、しつこく刺激することで効果的に鍛えることを期待できます。「重量を意識しない」ということは、普段、高重量を扱ってエクササイズを行っている方には抵抗があるかと思いますが、実はかなり効果的であるため、ぜひとも意識して頂きたいポイントです。
このため重量を大きくして負荷を高めるのではなく、重量を少なくしながらも回数を重視して鍛えることが効果的です。
前脛骨筋を鍛えるエクササイズは可動域が非常に狭くなる傾向があります。前脛骨筋のようなふくらはぎの筋肉を鍛えるエクササイズでは、そもそもの可動域が小さいからこそ、エクササイズ中には完全な可動域を設定して実施する必要があります。そのために、ボトムポジションではふくらはぎが切れそうになるくらいまで伸展させ、トップポジションではスネに痛みがくる位まで収縮させることが重要です。これを実施するためには、高重量を扱っての実施は難しく、やや軽いくらいの重量設定で実施することが重要です。
前脛骨筋を鍛えるエクササイズに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。このため、最初は難しいですが、前脛骨筋の位置を確認しながら、自身の実施している種目の中での前脛骨筋の動きを意識するのがオススメです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
前脛骨筋を鍛えるエクササイズに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
前脛骨筋を鍛えるエクササイズに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。基本的には、前脛骨筋が伸展するときに息を吸い、収縮するときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
前脛骨筋が痛くなること、すなわち脛骨過労性骨膜炎はシンスプリントと呼ばれており、膝より下部に鈍痛の症状が発生します。シンスプリントの原因は、いくつか存在します。
前脛骨筋が痛くなること、すなわち、シンスプリントは初心者によく発生する傾向が見られます。この理由は、初心者は運動に耐えうる筋肉が十分でないためです。前脛骨筋は、前述したように、脚裏のアーチを保つことで地面もしくは床からの衝撃がふくらはぎ、膝に伝達しないように防ぐ役割があります。このため、特に、前脛骨筋を中心とする膝下の筋肉が十分でないとシンスプリントの原因となります。以上を言い換えると、シンスプリントを予防するためには、前脛骨筋に加えて、下腿三頭筋などのその他の脚の筋肉も鍛える必要があると言えます。
「走りのフォームが悪い」と言われる場合には、いくつかの特徴があります。その中でもシンスプリントの原因になる可能性があると言われているのは、脚のつき方、脚の向きと言われています。このようにフォームが悪化すると、地面や床と足裏が接触したときの衝撃が大きくなり、これにより、脚裏まで接続している前脛骨筋が痛くなる原因となります。以上のようなフォームの乱れは、「自身が特に意識していない」という場合の他に、靴のサイズや形が合っていない、扁平足や外反母趾の影響、靴底がすり減っているなどの原因が挙げられます。特に、走る機会の多い方や、長距離を走る方などは、走る前にそのようなことを確認する方が良いです。
シンスプリントは、脚裏への刺激に対して、筋肉が耐えられなくなることで発生する症状です。このため、そもそも1回で脚裏に入る刺激が増大すると、シンスプリントになる可能性が増大するといえ、ランニング競技を行う選手の場合には、コンクリートでランを実施することが挙げられます。コンクリートは、陸上競技上で採用されているウレタンなどの材料と比較して、踏み込んだ際の衝撃力を逃さず、そのまま脚裏に伝える傾向があります。これにより、脚裏への刺激が強くなり、シンスプリントを発症する可能性が増大します。このことから、シンスプリントを予防するためには、非常に難しいですが、できるだけコンクリートでの走り込みを実施することは避けたほうが良いです。
やや高さがあるところで実施すると負荷が高くなる。
負荷を下げるために、座った状態で空中で実施しても良い。
床につま先を付けない。
やや高さがあるところで実施すると負荷が高くなる。
負荷を下げるために、座った状態で空中で実施しても良い。
床につま先を付けない。
中腰にしている分、特にカーフレイズでは可動域が大きくなる。
中腰にしている分、特にリバースカーフレイズでは可動域が小さくなる。
腰を曲げない。
座った状態でやや高さがあるところに脚を置く。
重量設定を重すぎないようにする。
座った状態でやや高さがあるところに脚を置く。
重量設定を重すぎないようにする。
実施できる環境はかなり限られる(マシンを配置しているジムがあまりない)。
重量設定を重すぎないようにする。
立った状態で、脚がクロスするようにし、クロスさせた方の脚の甲が伸びるようにつま先の甲側を床につけることで、前脛骨筋のストレッチを促します。両脚それぞれで10〜20秒を3セット実施するようにしましょう。
正座をした状態で、両腕を前に起き、この状態でつま先同士を内側に向けるようにして、脚の甲側の両つま先に体重をかけることで前脛骨筋のストレッチを促します。10〜20秒を3セット実施するようにしましょう。
アキレス腱を伸ばすような状態になり、後ろの脚の甲がつくようにして、前脚重心で下方向に体重が乗る様にすることで前脛骨筋のストレッチを促します。10〜20秒を3セット実施するようにしましょう。
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